苦言一束 髙山祭に寄せて
苦言一束 他九
(管理人註: 「苦言一束」以外の文章は別の記事に分けてアップします)
一. 苦言一束 市民時報 S26. 二月十日(水)
二. 民家の保護 朝日新聞S39
三. わが青春の本 芦花と紅葉 中日新聞S45 9月
四. 卯の花 毎日新聞
五. ふるさとの今昔 朝日新聞 息吹く江戸文化 のち学芸書林から單行本
六. 焼物修業 S48 7月 毎日新聞(東海散歩)
七. 東北ノ観光地に学ぶ 飛騨民芸協会通信 市民時報
八. 赤木清さん 江馬修遺稿集
九. 五月の頃 朝日新聞
十. 季節の味(アブラエ) 朝日新聞
苦言一束 髙山祭に寄せて
昭和廿三年二月十日の水曜日発行
市民時報にかいたものでこの續を書いたと思うが残っていない。
髙山祭に寄せて
正月の名古屋驛はスキーかついだお客でゴッタ返していた。信州に行く汽車に乗ることができず引返した人が多くあるのに髙山線沿線のスキー場に来る人は無かった。名古屋驛には十数種の信州側のスキー誘致ポスターが貼られているのに飛騨側のポスターは一個も見あたらない。
昨年坂上(サカガミ)のポスターを見て来た私の友人達は吊橋に驚ろいて「楽に渡れる様に架替ったら又来る」といって帰った。いかに施設の貧弱のことよ、宣傳の下手なことよだ――。
最近本年度の観光スケジュウルなるものを見て驚ろいた。山王祭から八幡祭の大祭までの期間、駅前に杉葉の大鳥居を建てるというのである。
一体杉の鳥居がどれほど宣傳効果があるか。駅を降りた人が鳥居を見て喜こぶだらうか。少なくとも飛騨号を走らせたいというのであるからこれまでのように髙山周辺の人々を髙山に集めるつもりではなからう。それならば珍らしくもない、美しくもない鳥居を駅を降りてから見せるより、汽車に乗る人を一人でも多くしなければならない事がおわかりになりませんか。
杉葉鳥居を作る費用で名古屋や岐阜、富山の駅に四月一日頃から髙山祭を宣伝なさい。写眞は写眞屋アマチャー氏の芸術的香りの髙い(絵葉書写眞でないこと)写眞の原版を借りて廿センチ――三センチの写眞を作り三尺ぐらゐの壁面に四尺ぐらゐの足を付け、これをいくつもいくつもつないで折畳式の屏風の様にして裏表を利用すると場所もとらず効果がある。鉄道とタイアップして待合室にも天気の良い時駅前の野天に置いても良い。又名古屋駅のような広いコンコースある駅は相当大きなものでも差しつかえない。
これを一度作って置けば登山スキー或は飛騨の風物等、時に折に写眞を取替て使うことができる。
まづ駅前に鳥居を作るよりわこの方をお進めする。
またポスター三千枚をとか作られるそうですが先年の山王大祭のポスターは十数年前の大祭の時の圖案をそのまま使ったという呆れかえったものであった。優秀なポスターはそれだけ宣伝力があることを知るべきである。
また今までのに出たポスターは色調が悪く陰気な物が多いがもっと明るい色調にすべきである。祭のポスターは下手な圖案を書いてもらうより屋台(エビス台、五台山、鳩峰車)の斜めうしろより見た写眞を原色にして使ったほうが効果がある。